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脳腫瘍 brain tumor

定義

頭蓋内に発生する新生物の総称である。

発生母地は、脳実質・髄膜のみでなく、血管、下垂体、 頭蓋内結合織、先天性遺残組織、頭蓋などである。 これらの母地に原発性に発生する腫瘍と、転移性の腫瘍とがある。

脳腫瘍は40才代に最も多く、また小児は15〜20%を占める。 脳腫瘍は組織学的種類によって好発年齢が異なることも特徴である。



分類

1.神経膠腫(グリオーマ)

原発性脳腫瘍の中で最も頻度が高い。 神経膠細胞(グリア細胞)から発生し、脳組織内へ浸潤性に発育する。 したがってその神経症状は常に脱落症状であり、腫瘍を摘出したからといって回復しない。

成人では大脳に、小児では小脳に多い。神経膠芽腫は非常に悪性で、頻度も高い。 そのほか、星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、髄芽腫などがある。 髄芽腫は小児の小脳虫部に好発し、最も悪性で髄腔内転移をきたしやすい。


2.髄膜腫

脳腫瘍の15〜18%を占める。小児には極めて稀である。 くも膜のパキオ二ー顆粒から発生する。 脳を外から圧迫し、脳内に浸潤しない。

したがって手術により全摘できる。 発育が緩徐であるゆえ、神経症状の進行も緩徐である。 手術により摘除すれば機能は回復する。


3.神経鞘腫

脳腫瘍の7〜8%を占める。 小児には少ない良性腫瘍である。シュワン細胞から発生する。 95%が聴神経、5%が三叉神経から発生する。

聴神経腫瘍は小脳橋角部にあるので、 この部の腫瘍は小脳橋角部腫瘍といわれ、次のような共通の症状を示す。

第8脳神経症状(耳鳴、難聴、めまい)
第7脳神経症状(顔面麻専、味覚障害)
第5脳神経症状(顔面感覚鈍麻、角膜感覚喪失)
小脳症状(協調運動障害、失調性歩行)  などである。


4.下垂体腺腫

脳腫瘍の10〜12%を占め、小児には極めて稀である。 嫌色素性腺腫と好色素性腺腫に分類され、 後者は更に好酸性腺腫と好塩基性腺腫に分類される。 好色素性腺腫は各種ホルモンを過剰に分泌する。

嫌色素性腺腫は下垂体腺腫の70〜80%を占める。 腫瘍の増殖により周囲組織の分泌細胞を圧迫して下垂体前葉機能低下を招く。 中にはプロラクチンを産生するものがあり、乳汁分泌・無月経などの症状を呈する。

トルコ鞍外まで発育すれば視交叉部を圧迫して両耳側半盲をきたす。好酸性腺腫は成長ホルモンを分泌し、 巨人症や先端巨大症をきたす。

好塩基性腺腫はACTHを分泌し、クッシング病をきたす。


5.松果体腫瘍

松果体に発生する腫瘍には、

(1)松果体固有細胞から発生する腫瘍(pineocytoma,pineoblas-toma)
(2)先天性腫瘍(胚芽腫、類皮腫、類上皮腫)
(3)グリオーマ

がある。胚芽腫が最も多く、10才代、男子に好発し、放射線感受性が高い。
松果体腫瘍は、中脳の上丘を圧迫してパリノー徴候(上方注視麻痺)を出現させ、 また中脳水道を圧迫閉塞して内脳水腫をきたす。


6.先天性腫瘍

本来消失すべき胎生期の遺残や異なった組織の達人などから、発生する腫瘍である。 頭蓋咽頭腫や、類上皮腫、類皮腫などがある。

この中で、頭蓋咽頭腫が最も多く、小児脳腫瘍の約15%、成人では約5%を占める。 胎生期の頭蓋咽頭骨の遺残組織から発生する。 トルコ鞍上部に発生し、下垂体・現床下部を圧迫して、内分泌不全症をきたし、 視交叉部を圧迫して視野欠損、視力障害をきたし、第3脳室を圧迫して水頭症による脳圧亢進症状をきたす。


7.血管性腫瘍

血管性腫瘍には血管芽腫と血管腫があるが、 血管腫は新生物ではない。

血管芽腫は小脳、網膜にみられ、血管腫は大脳半球にみられる。 網膜血管腫に小脳の血管芽腫を伴った疾患をヒッペル・リンダウ氏病(von Hippel-Lindau) という。


8.転移性脳腫瘍

全脳腫瘍の約10%を占める。 40〜60才に多い。原発巣は肺癌が最も多く、次いで乳癌、胃腸の癌、 頭頚部の癌、子宮癌などである。 脳転移巣は多発性のことが多い。



症状

脳腫瘍の臨床的な特徴は症状が常に進行であるというところにある。 すなわち、病初期は軽度の運動麻痺であったものが次第に完全麻痺になったり、 てんかん発作の頻度が次第に増加したり、 次々に新たな局所神経症状が加わったりするということである。

脳腫瘍の症状は、脳占拠性病変による脳圧亢進症状と局所神経症状から成る。


1.脳圧先進症状:

脳圧先進が起こる機序は次のようである。

 ア.脳腫瘍自体の大きさ
 イ.腫瘍周囲の脳浮腫
 ウ.腫瘍が脳室を圧迫して髄液還流が阻害されて起こる内脳水腫

発育速度が速いほど、また悪性度の高いほど脳圧先進は強い。

臨床症状としては、頭痛、嘔気嘔吐、うっ血乳頭が3徴候とされる。


2.局所神経症状:

腫瘍の部位によって種々である。 運動麻痺、感覚障害、失語、半盲、失調など多彩である。 大脳半球腫瘍の場合にはてんかん発作を呈するものもある。

大脳半球の前頭葉、右側頭葉、後頭葉などは無症状域(silent area)といわれ、 かなり腫瘍が大きくなるまで局所症状が現れないことがある。


3.脳神経の症状:

頭蓋底や脳幹に発生した腫瘍の場合には脳神経麻痺症状が認められる。 ただ、外転神経麻痺は単なる脳圧亢進のみでも起こることがある。



検査・診断

1.CTおよびMRI:

脳腫瘍の診断に欠かせない。 単純撮影のみでなく、遺影撮影も不可欠である。


2.脳血管撮影:

悪性度の高い腫瘍や血管に富む腫瘍では血管陰影が認められる。


3.脳波:

大脳半球の腫瘍では、局所性の徐波や発作性異常波がみられる。


4.脳シンチグラフィー:

腫瘍局所に異常なアイソトープの取り込み像がみられる。


5.頭蓋単純X線撮影:

脳圧亢進が持続した場合には指圧痕、トルコ鞍拡大などがみられる。 下垂体腫瘍や頭蓋咽頭腫ではトルコ鞍破壊像がみられる。 頭蓋咽頭腫や松果体腫瘍では異常な石灰化像がみられる。



治療

1.手術療法:

通常開頭して、可能なかぎり全摘出する。

下垂体腺腫では、経鼻的に、蝶形骨洞を経てトルコ鞍を開放し、 腫瘍を摘出する方法もある。

脳圧亢進症状に対して姑息的に脳室ドレナージを行うこともある。


2.放射線療法:

悪性度の高いものは術後放射線照射を行う。 腫瘍の種類により放射線感受性は異なる。 髄芽腫や松果体胚芽腫は感受性が高い。


3.化学療法・免疫療法:

腫瘍の種類によってこれらの治療法も併用される。


4.内科的療法:

脳浮腫に対して高張液(グリセオールなど) の点滴や副腎皮質ステロイド剤の投与が行われる。 てんかん発作に対しては抗痙攣剤を投与する。 下垂体部の腫瘍では術後に内分泌学的な補充療法を要する場合がある。



予後

腫瘍の悪性度により予後は異なる。

多形性膠芽腫、髄芽腫、転移性脳腫瘍などは一般に予後は良くない。 髄膜腫や神経鞘腫などは全摘すれば一般的に予後は良い。